種からこだわる
ひたちなか市で、『ほしいも村 飛田勝治農園』を営む飛田勝治さんと裕子さん夫妻。『たまゆたか』という品種を中心に、いずみ、紅はるか、人参芋、紫芋等およそ8種類のほしいもを作っています。
ほしいもの中でもっともポピュラーな品種である『たまゆたか』ですが、飛田さんの作る『たまゆたか』はただのそれとは違うようです。
「親父から経営を受け継ぎ、カミさんと二人で直売所を建てて直売も始めました。お客さんの声が直に聞けるようになったことで、それまでより商品に対する責任感を強く感じるようになりました。もっとおいしいって言ってもらえるものを作りたい。そのためには、良い原料いもを作ろうと、優良品種の選抜を始めました。」
飛田さんは、優良品種の種イモの選抜と肉質・形状の選抜も重ね、研究を続けました。最後に【T.T34号】という品種を見出した頃には、選抜開始から20数余年もの歳月が経っていたそうです。
形も味も良い飛田さんの『T.T34号たまゆたか』は、ほしいも産地を盛り上げたいという飛田さんの思いから、近隣農家さんにも無償で配ったところ、「良いほしいもができる」と評判なのだそうです。
麦間栽培(ばっかんさいばい)
冬には冷たい海風が吹くひたちなか市周辺では、寒さから芋を守るため、芋のうねの間に麦を植える"麦間栽培"が昔から行われていました。現在この栽培方法をとる農家は少なくなりましたが、飛田さんはこのやり方を継承しています。
「麦間栽培は、寒さから芋を守ることができると同時に土が柔らかくなり、根がストレス無く伸びるため、芋がまっすぐ育ちやすいようです。また、麦わらを干して、ほしいもの干し場の足元に敷くと砂埃が舞うのを防いでくれます。麦の管理は大変だけど、収穫した麦でカミさんがパンやピザ焼いてくれるんです。いつかはこの麦でパン屋をやりたいっていうカミさんの夢のひとつが叶ったようで、嬉しいです。」
もちろんほしいもの為に栽培している麦ですが、現在3種類の麦を植えるなどして麦作りも楽しんでいると語る飛田さん。直売所の横にパン専用の加工所も造設し、できた小麦で奥様(裕子さん)が焼くパンは、時期限定ですが直売所で販売もされ、夏場はパン教室も開いているそうです。パンのおいしさを知っているリピーターも多く、パンの販売が開始されると即完売してしまうそうです。
伝統の天日干し
近年のほしいも作りは、一番大変な作業といわれる"干す工程"を機械で行う農家も増えてきました。そんななか飛田さんは、あくまで手作業で干す"天日干し"にこだわっているそうです。
「ほしいもは本来、冬の冷たい海風と太陽に当ててやることで、グッと甘さが増してうま味が凝縮されるもの。平干しは1週間、丸干しは約1ヵ月かかり、体力もいるし天候との戦いで大変ですが、うちはできる限りこの伝統の製法にこだわっていきたい。」と飛田さん。
飛田さんの"干し場"は海風と太陽がよく当たるよう計算して配置してあるそうです。